デジタル技術が進化する昨今、企業にとって業務のDX化は避けられません。でも、そもそもどんなデータを使えばいいの?データをどこで収集してどう使えばDXにつながるの?と疑問を持つ経営者も多いはず。
そんな時役立つのが「オープンデータ100」です。オープンデータ100とは、公共性あるオープンデータを利活用してビジネス変革に取り組んだ事例で、政府CIOポータルサイトで公開されています。
このオープンデータ100を参考にすれば、地域や企業の課題が浮彫になり、サービスやビジネスモデルを見直すきっかけになるでしょう。そして、DXへの一歩に必ず近づくはずです。
そこで、ここからは「オープンデータ100」について、詳しく解説します。
そもそもオープンデータとは何?
「オープンデータ100」のお話をする前に、まずオープンデータとは何なのかを説明しましょう。
オープンデータとは公開されたデータのことですが、特徴としては
- 誰もが無償で利用できること
- 再利用、再配布、加工や編集ができること
- 機械判読できること
などが挙げられます。
オープンデータの提供元は、国や地方自治体、NGOや民間企業など様々ですが、公平性や信頼度が高いので、そのままマーケティングなどビジネス戦略に使うことができます。
さらに、これらのデータに付加価値を付けることで、顧客満足度を高めたり、事業のあり方を見直して競合他社と差別化を図ることができます。
おすすめのオープンデータ入手先
オープンデータの入手先は数多くありますが、どんな目的で何のデータを集めたいのかを明確にして、情報を探すことが大切です。
ただ、試行錯誤しているうちに、データ間に思いもよらぬ相関関係が見つかりビジネスにつながることもあります。これも、無料で自由に使えるオープンデータならではのメリットでしょう。
では、おすすめのオープンデータ入手先をいくつかご紹介します
データカタログサイト
デジタル庁が運営する情報ポータルサイトです。
こちらのサイトから、オープンデータを公表する機関に飛ぶことができます。災害や賃金、事故や家計などジャンルも幅広く、地域ごとの睡眠時間や体力測定の結果なども検索できます。
日本総務省統計局
総務省統計局、統計研究研修所の共同運営によるサイトです。国勢調査や家計調査だけでなく、各月の人口の動きや個人消費の動向なども調べられます。
統計ダッシュボード
国や民間企業が提供する統計データをグラフ化して、視覚的にわかりやすくしています。プレゼンなどで利用すれば、説得力も高まります。
オープンデータ100の事例
「オープンデータ100」は、オープンデータを利用して地域の活性化や企業の変革を目指す方への参考になることを目的としています。また、オープンデータ100に公開されている事例は、次のようないくつかの選定基準があります。
利活用事例
- オープンデータを利用した実用性ある事例で一時的でないもの
- 登録済の事例と類似性のないもの
アクティビティ
- オープンデータの普及を目的とした継続性のある地域の取組みであること
- 主な利用者や参加者が明確であること
- 広域で展開できる活動であること
ここからは、オープンデータ100の事例からいくつか抜粋して内容を見ていきましょう。
まずは、民間事業者によるオープンデータ利活用事例です。
オープンデータ100の事例1:カーリル
- 使用データ 図書館蔵書データベース。
- 読みたい本を全国6,000以上の図書館から検索できるサービス
従来の図書サービスは、各自治体が独自に行っていたため、利用者自身が自治体ごと個別に読みたい本を検索する必要がありました。そんな利用者の手間を省き、日本中どこにいても同質の図書サービスを受けられる仕組みを確立したのが、民間企業であるカーリルです。
読みたい本のタイトルを入力すると、予め登録しておいた現在地に近い図書館の蔵書や貸出状況を検索できます。さらに、Amazonなどのデータベースとも連携しているので、そのままインターネットで本を購入することも可能。こうして、読みたい本にスピーディーにアクセスできることで図書館利用の促進につながっています。
このように、カーリルは図書館からの情報を取集して、利用者に使い勝手のよいサービスを開発しました。まさに、民間企業が公共の分野を再構築した事例ともいえます。
オープンデータ100の事例2:GEEO(ジーオ)
- 使用データ 国勢調査、住宅、土地統計調査、路線図など
- 独自のアルゴリズムで物件の販売価格を予想し、不動産取引の透明化を高めるサービス
不動産取引では、多くの情報を持つ売り手側がどうしても有利になり、情報量の少ない買い主側は不動産価格を提示されても、それが正当なものなのか判断が難しい状況でした。
そこで、GEEOは国勢調査など官公庁系のオープンデータを活用し、独自のアルゴリズムで物件の販売価格を予想するサービスを構築しました。これにより、買い主側が入手できる情報が増え不動産市場の透明性も高まりました。
こうした物件価格は、同エリアの小売店出店時の売上予測、犯罪や事故の発生予測にも利用可能です。
オープンデータ100の事例3:全国避難所ガイド
- 使用データ 全国の避難所、広域避難場所、帰宅困難者一時滞在施設、津波避難施設情報
など - 災害時に現在地から最短の避難場所を検索できるサービス
出張や旅行など慣れない場所で災害に遭った時、自分が避難できる避難場所を見つけ出すのは困難です。そんな時「全国避難所ガイド」(ファーストメディア運営)のスマホアプリなら、現在地から最も近い避難所、避難場所を検索して、位置情報や施設情報を表示。さらに、現在地からの道順もルート案内できます。また、現在地に連動した気象情報や地震情報などの防災情報もプッシュ配信されます。
また、全国避難所ガイドに登録されている避難所や避難場所の登録件数は13万件以上で、データベースは随時更新されています。災害の多い日本だからこそ、「全国避難所ガイド」アプリを登録して事前確認しておけば、全国どこにいてもいざという時の備えになるはずです。
次に、次に地方公共団体等によるオープンデータ利活用事例です。
オープンデータ100の事例4:5374(ゴミナシ).jp
- 使用データ 各自治体のゴミ収集情報
- いつ、何のゴミを捨てればよいのかゴミの収集日を自動で表示するアプリ
近年では自治体ごとにゴミの分別は細分化され、引越しなどで自治体が変わるとゴミの分別方法や収集日が異なるので調べるのも大仕事でした。こうした地域住民の不満を解決するために開発されたのが5374.jpです。
5374.jpのアプリトップ画面では、一番近いゴミの日から表示し、地域を選択すれば収集日が更新されます。また、その地域で捨てられるゴミ一覧も見ることができるので、アプリを確認するだけで適切なゴミ出しを行えます。
さらに、5374.jpのソースコードは公式サイトでオープンになっているので、各自治体に合わせたゴミ収集アプリを作成できます。なので、金沢市で開発された5374.jpは、今や日本全国に広まりつつあり、「ゴミ出しの手間」という地域課題の解決に役立っています。
オープンデータ100の事例5:鯖江バスモニター
- 使用データ 路線と便を指定したバスの位置データほか
- リアルタイムでバスの現在地を表示するブラウザアプリ
バスが今どのあたりを走っているのかは、市民にはなかなか見えにくい情報ですが、鯖江市では特に、冬季の降雪によるバスの遅延などの苦情が多い状況でした。
そこで、鯖江市は市営のつつじバスにタブレット端末を載せ、そのGPS機能を使用してバスが走っている場所のデータを市民に公開するサービスを始めました。これにより、市民もスマホやパソコンから、リアルタイムのバス運行情報を確認できるようになり、利便性が向上しました。
このシステムの特徴は2つ。専用システム開発などを行っていないので、低コストで運用できることと、バスの運行情報を市のオープンデータサイトで公開しているので、市民は誰でも自由に使用できるということです。これらのデータを利用して作成されたアプリは、すでに100を超え、行政への国民参加につながっています。
今回ご紹介した事例はほんの一部です。他にも多くの事例が公開されていますので、ご興味のある方は政府CIOポータルサイトで閲覧ください。
まとめ
「オープンデータ100」の事例からもわかるように、オープンデータをうまく利活用すれば、市民と自治体が協働して新しい公共サービスをつくることができます。さらに、「利用者の困った」を解決することで、新たなビジネスに広がることもあります。
無料で誰でも利用できるオープンデータは「宝の山」です。DXを目指す行政や企業は、「オープンデータ100」の事例をぜひ参考にして、従来の習慣にとらわれない新しい価値やサービスを生み出してください。