デジタル庁の発足
2018年9月7日、経済産業省は【DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~】を発表しました。
このレポートの中に、日本の置かれている状況や、なぜDXが必要なのか、今後どの様にDXを推進し、どこを目指すか記載されています。
要約すると次のようになります。
- 新たなビジネスモデルを展開する企業により、既存のビジネスモデルの収益低下
- このままでは、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる(2025年の崖)
- DXを早急に導入し、2030年の実質GDP130兆円超を目指す
このレポート公開から3年後の2021年9月1日、デジタル庁が発足、菅総理大臣は発足式で「思い切ってデジタル化を進めなければ、日本を変えることはできない」とおっしゃいました。
日本におけるDX化とは
たった10年で実質GDP130兆円超を目指すのですから、相当力を入れて推進する必要がありますし、日本がDX化に大きな期待を寄せていることが良くわかります。
先ほどのレポートに詳しく記載されていますが、日本が目指すDX化とは、「既存の企業が、IT業務の効率化を図ると共に、インターネットを活用した新たなビジネスモデルを創出し、企業の競争力を強化する」ことを目標として掲げています。
簡単に書いてますが、企業にとっては大仕事です。
具体的な「DXの推進」
企業が成長するためには、増収・増益の実現が必要不可欠で、そのための方策として「原価削減」と「売り上げ向上」の2つがありますが、DXの活用により、これらを実現することが提案されています。
原価削減
「原価削減」の手段として、IT業務の効率化があげられます。企業にお勤めの方ならわかると思いますが、長年培ってきた商売の定石、社内の経理の手順、お客様との契約手順や業務内容など、様々なルールがあると思いますが、これらを見直し、効率化を図ることになります。
例えば、紙の契約書を電子文書化、押印を電子印鑑に置き換える、古くて遅いシステムを段階的に置き換え、事務作業を効率化し、空いた時間を別の作業に割り当てる、などの事例がイメージし易いと思います。これ以外にも、部門によって異なる業務手順を統一し効率化する、ブラックボックス化してしまったシステムを見直し使いやすくして効率化を図る、といった方法もあると思います。
「そんなことはできない」という方も多いと思います。しかし、これらを放置すると、時代に取り残されてしまい、仕事がなくなってしまうリスクがあるのです。
売り上げ向上
もう1つ「売り上げ向上」の手段として、「第3のプラットフォーム」(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用し、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを創出し、企業の競争優位性を確立する事があげられます。
商品をお客様にお届けする手段として、商品をお客様の近くの小売店に配送する必要がありましたが、今ではお客様がネットで簡単に商品を購入することができます。
ほんの一例ですが、この様な状況に対応できない企業は同業他社や後から出てきた新興企業や、海外の企業に利益を奪われてしまう恐れがあります。企業が生き残るためには、「第3のプラットフォーム」を含めた強力なIT活用が今後の鍵となることは間違いないと言えます。
既に始まっているDX化
デジタル庁のホームページに、「オープンデータ100」というコンテンツがあります。これは、様々な事業者や地方公共団体等が公開しているオープンデータを利用した事例が記載されており、既に80以上の事例が掲載されています。
例えば、農業のIT化(スマートアグリ)の事例として、ウォーターセル株式会社の「アグリノート」では、それまで手書きだった農作業の記録を、PCやスマートフォンから記録・集計可能とし、入力の手間を減らし、いつでもその場でデータの確認を可能としています。
別の例として、個人のお困りごとを解決することに着目した株式会社Zaimの「家計簿・会計アプリ Zaim」では、国や地域からの給付金や医療費控除などの情報を、アプリが自分で探し、もらい忘れや見逃しの抑止に役立てる事ができます。
この様に、日本でもDX化への取り組みは既に始まっており、多くの企業で成果が出つつあります。DX化への取り組みは、企業に取って死活問題になってくる事が容易に予想されます。
2030年の日本の姿
デジタル庁では、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というキーワードを掲げ、日本のデジタル化推進に取り組んでいます。単に「デジタル化」だけを目指すのではなく、次に示す「デジタル社会を形成するための10の原則」を掲げ、 デジタル社会の実現に向けた構造改革を推進しています。
- オープン・透明
- 公平・倫理
- 安全・安心
- 継続・安定・強靭
- 社会課題の解決
- 迅速・柔軟
- 包摂・多様性
- 浸透
- 新たな価値の想像
- 飛躍・国際貢献
これらの言葉から、「安全・安心を維持しつつ、早急に社会を変革し、飛躍していこう」というデジタル庁の意向がよく現れています。
そして、「誰一人取り残されることなく、多様な幸せが実現できる社会」を実現するための施策として、次の6項目が掲げられています。
- 継続的な成長
- 一人ひとりの暮らし
- 地域の魅力向上
- UX・アクセシビリティ
- 人材育成
- 国際戦略
ここに記載されている施策は、「誰一人取り残されることなく」を実現するため、どれも欠かすことのできない内容であると言えます。先ほどの10の原則の元、上記6つの施策が実行される事で、着実にデジタル化/DX化が進み、「2025年の崖」を乗り越えられる事ができると感じています。そのためにも、企業 および 個人がデジタル化/DX化への変化を受け入れ、積極的に取り組んでいく必要があると考えます。
デジタル庁を軸とした日本の「2025年の崖」を乗り越えるという大きな意思の元、多くの企業がDX化への取り組みを進め、新たなサービスが創出続け、我々の暮らしも豊かになっていく事でしょう。今後、どんな新サービスが登場するか、とても楽しみです。
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